日本企業の台湾進出ガイド|会社設立・代理店・商標登録、最初に準備すべきことを解説

台湾進出を考えたとき、「会社を作ること」だけを考えていませんか?

台湾市場への進出を検討している日本企業から相談を受けると、最初によく聞かれるのが「台湾に会社を設立するにはどうすればいいですか?」という質問です。

もちろん、会社設立は重要です。ただ、実際の台湾進出では、会社を作ればすべての準備が終わるわけではありません。

たとえば、台湾で商品を販売するのであれば、誰が輸入するのか、誰が販売するのか、現地代理店を利用するのか、自社で台湾法人を設立するのかを決める必要があります。

さらに、日本で使用しているブランド名を台湾でも使用するのであれば、その名称が台湾ですでに第三者によって商標登録されていないか、中国語の商品名やブランド名を新しく付けるのであれば、その名称を誰が管理するのかという問題も出てきます。

つまり、台湾進出では「会社設立」「ビジネスモデル」「契約」「ブランド」「知的財産」を別々の問題として考えるよりも、最初から一つの進出計画として整理しておくことが重要です。

実際、台湾政府の投資情報でも、外国企業が台湾で事業を行う形態として、大きく「子会社」「支社」「事務所」などが案内されています。それぞれ目的や可能な活動が異なるため、台湾で何をしたいのかによって適切な形態を選ぶ必要があります。


1.まず決めたいのは「台湾で何をするのか」

台湾進出を考えるとき、最初から「台湾法人を作る」と決める必要はありません。

重要なのは、台湾で行いたい事業内容を整理することです。

たとえば、市場調査や取引先との連絡を中心に行いたいのか、台湾で直接商品を販売したいのか、台湾企業と代理店契約を締結して販売を任せたいのか、それとも台湾をアジア市場の拠点として本格的に事業展開したいのかによって、必要な体制は大きく変わります。

台湾政府の案内では、外国企業による台湾進出の形態として、台湾法に基づいて新たな会社を設立する「子会社」、外国会社自身が台湾に設置する「支社」、そして営業活動を目的とせず、一定の法律行為や連絡活動などを行う「代表者事務所」などがあります。

一方で、まだ台湾市場の規模が分からない段階では、台湾企業を販売代理店やディストリビューターとして利用し、まず商品を台湾市場で販売してみる方法もあります。

台湾進出=必ず会社設立、というわけではありません。

特に初期段階では、「台湾で誰が売るのか」「誰が契約主体になるのか」「在庫や輸入を誰が担当するのか」を整理したうえで、会社設立が本当に必要なのかを考えたほうがよいでしょう。


2.台湾法人を設立する場合、どのような準備が必要?

日本企業が台湾に子会社を設立する場合、一般的には会社名称や営業項目の事前確認、外国人投資の申請、資金の送金・投資額の確認、会社設立登記などの手続きが必要になります。

台湾経済部が公開している外国投資による会社設立の流れでも、まず会社・商号名称および営業項目の事前審査を行い、その後、外国投資申請、資金送金、投資額の確認、会社設立登記という流れが案内されています。

ここで日本企業に特に注意してほしいのが、「会社名称が登録できること」と「その名称を商標として使用できること」は別の問題だという点です。

たとえば、日本本社のブランド名と同じ名称を台湾法人の会社名として登録できたとしても、それだけで台湾における商標権を取得したことにはなりません。

逆に、台湾ですでに類似する商標が第三者によって登録されている場合、会社自体は設立できても、商品のブランド名としてその名称を使用することに問題が生じる可能性があります。

台湾進出では、会社名の確認と同時に商標調査も行っておくことをおすすめします。


3.台湾代理店を利用する場合は「誰がブランドを持つのか」を明確にする

台湾市場へ進出する方法として、日本企業にとって比較的始めやすいのが、台湾企業と代理店契約や販売契約を締結する方法です。

台湾法人を設立する前に現地市場の反応を確認できるというメリットがありますし、台湾側の販売網や営業力を利用できるため、食品、化粧品、生活用品、機械設備など、さまざまな業種で利用されています。

ただし、ここで注意したいのが「ブランドの管理」です。

台湾代理店から、

「台湾の商標はこちらで申請しておきます」

「中国語の商品名はこちらで考えます」

「台湾で使用するブランド名は私たちの会社名義で登録します」

と言われることがあります。

すべてが問題というわけではありませんが、日本本社としては、少なくとも「その商標を誰の名義で登録するのか」は必ず確認しておいたほうがよいでしょう。

代理店名義で台湾商標を登録した場合、将来代理店との契約が終了したときに、その商標を引き続き使用できるのかという問題が発生する可能性があります。

特に、すでに日本で長期間使用しているブランドや、将来的に台湾で事業を拡大したいブランドについては、原則としてブランドを所有する日本企業自身が権利を管理しておくほうが安全です。

代理店には「商品の販売」を任せても、「ブランドそのもの」まで任せる必要はありません。

これは台湾に限らず、海外進出時のブランド管理では非常に重要な考え方です。


4.日本で商標登録していても、台湾では自動的に保護されない

これは台湾進出を考える日本企業に特に知っておいてほしいポイントです。

「日本ではすでに商標登録しているので、台湾でも使用できますよね?」

という質問を受けることがありますが、日本で取得した商標権の効力が、そのまま台湾まで及ぶわけではありません。

台湾で商標権を取得したい場合は、原則として台湾で商標登録を行う必要があります。

また、日本企業が台湾国内に住所や営業所を持たない状態で台湾商標の手続きを行う場合には、台湾に住所を有する商標代理人を選任して手続きを行う必要があります。台湾に会社法上の支店を設置している外国会社については例外があります。

台湾で商標を申請する際には、申請人情報、商標、指定商品・役務、商標見本などを提出し、代理人を選任する場合には委任に関する書類も必要となります。

ここで大切なのは、「台湾で販売を開始してから商標登録を考える」のではなく、可能であれば台湾進出を決めた段階で先に商標調査を行うことです。

商品を台湾で販売し始めたあとに、「実は同じような名称がすでに登録されていました」と分かった場合、パッケージ、広告、ECサイト、店舗看板などを変更しなければならなくなる可能性があります。

進出前なら名称変更という選択肢も取れますが、販売開始後では変更コストが一気に高くなります。

商標登録は単なる行政手続きではなく、台湾進出前のリスク確認の一つとして考えたほうがよいでしょう。


5.台湾向けの「中国語ブランド名」も忘れずに

日本企業が台湾市場へ進出するとき、意外と後回しにされやすいのが中国語ブランド名です。

日本語や英語のブランド名をそのまま台湾で使用する企業もありますが、台湾の消費者や代理店が自然に中国語名称を付けて呼び始めるケースも珍しくありません。

ここで問題になるのが、「その中国語名称を誰が決め、誰が権利を持つのか」です。

日本本社が何も決めていないうちに、代理店や販売店が中国語名称を作成して使用し、その名称が台湾市場で定着することもあります。

そのため、台湾市場を重要な市場として考えているのであれば、日本語・英語のブランドだけではなく、中国語名称についても早い段階で検討することをおすすめします。

中国語ブランド名を決める際には、単純に日本語の発音を中国語に置き換えればよいというわけではありません。

台湾での意味、発音、消費者が受ける印象、既存商標との類似性なども確認する必要があります。

良い中国語ブランド名は、台湾市場におけるブランド資産になります。

逆に、進出後に慌てて決めてしまうと、「市場ではすでに別の呼び方が定着している」「申請しようとしたら同じような商標が存在する」といった問題につながることがあります。


6.会社設立と商標登録、どちらを先にすればいい?

これもよく聞かれる質問ですが、必ずしも「会社を設立してから商標を申請しなければならない」という順番ではありません。

ケースによっては、日本本社の名義で台湾商標を先に申請し、その後台湾法人を設立することもできます。

むしろ、台湾で使用したいブランドがすでに決まっているのであれば、会社設立と並行して商標調査を進めるほうが合理的です。

注意したいのは、台湾に「支社」を設立する場合です。台湾知的財産局(TIPO)の説明では、外国会社の台湾支社は独立した法人格を持たないため、支社そのものを商標権者として申請することはできず、原則として外国本社の名義で商標登録を申請します。

つまり、会社設立の形態によっても、商標を誰の名義で保有するべきかは変わってきます。

そのため、「会社設立は会計士」「契約は弁護士」「商標は商標代理人」と完全に切り離して考えるより、それぞれの専門家に台湾進出全体の計画を共有しておくことが大切です。


7.台湾進出前に最低限確認しておきたい5つのこと

台湾進出の準備段階では、少なくとも次の5点を確認しておくとよいでしょう。

第一に、台湾で誰が事業を行うのか。日本本社、台湾法人、支店、代理店など、事業主体を明確にします。

第二に、誰が台湾で商品を輸入・販売するのか。特に代理店を利用する場合は、販売地域、独占・非独占、契約期間なども確認します。

第三に、日本で使用しているブランド名を台湾でも使用できるか。台湾商標の先行調査を行い、第三者の商標との衝突リスクを確認します。

第四に、中国語ブランド名を使用するか。使用する場合には、名称を決めるだけではなく、商標登録まで検討します。

第五に、台湾における商標権を誰が保有するか。特に代理店との契約では、ブランドや知的財産権の帰属を明確にしておくことが重要です。

この5点を進出前に整理しておくだけでも、台湾で事業を開始したあとに発生するトラブルをかなり減らすことができます。


台湾進出は「会社を作ること」ではなく「台湾で事業を続けられる状態を作ること」

日本企業の台湾進出というと、どうしても会社設立の手続きに目が向きがちです。

しかし、本当に重要なのは、台湾法人を設立することそのものではありません。

台湾で商品やサービスを継続的に販売し、代理店や取引先との関係を管理しながら、自社ブランドを守り、事業を成長させられる状態を作ることです。

会社は設立したけれど商標が使えない。代理店との契約は締結したけれどブランドの権利関係が曖昧。中国語ブランド名が市場で広まったあとに第三者の商標が見つかる。

こうした問題は、台湾進出後に対応しようとすると、想像以上に時間と費用がかかります。

だからこそ、台湾進出を検討し始めた段階で、「会社設立」「代理店」「契約」「ブランド」「知的財産」を一度まとめて整理しておくことをおすすめします。

知築智慧產權顧問では、台湾進出を検討する日本企業に対して、台湾における商標調査・商標登録をはじめ、ブランド名称の確認、中国語ブランド名の知的財産リスク、台湾代理店とのブランド管理など、台湾市場における知的財産の観点からサポートしています。

「まだ台湾法人を設立するか決めていない」「まず代理店を通じて販売したい」という段階でも、商標やブランドについて事前に確認することは可能です。

台湾進出を正式に決定してからではなく、台湾市場を検討し始めた段階で、一度ブランドの権利関係を確認してみる。

それが、台湾進出後の余計なトラブルを避けるための、一番シンプルな準備かもしれません。


まとめ|台湾進出は、会社設立だけでなくブランド管理まで一緒に考える

日本企業が台湾進出を検討するとき、最初に考えることは会社設立や販売代理店の選定になりがちです。しかし、実際に台湾で事業を続けていくためには、それだけでは十分ではありません。

誰が台湾で事業を行うのか、誰が商品を販売するのか、代理店とはどのような契約を結ぶのか、ブランド名や中国語名称をどのように管理するのか、そして商標権を誰の名義で保有するのか。これらは別々の問題に見えて、実際にはすべてつながっています。

特に商標については、「台湾で販売を始めてから考える」のでは遅い場合があります。すでに第三者が類似する商標を登録していた場合、商品名やパッケージ、広告、販売ページなどを変更しなければならなくなる可能性もあります。

そのため、台湾進出を具体的に検討し始めた段階で、会社設立や代理店探しと並行して、台湾で使用予定のブランド名について商標調査を行い、権利関係を整理しておくことが重要です。

台湾進出の準備は、「会社を作ること」がゴールではありません。台湾市場で安心して事業を続けられる状態を作ることが、本当の意味での進出準備です。

知築智慧產權顧問では、日本企業の台湾進出にあたり、台湾商標の事前調査、商標登録、中国語ブランド名の確認、代理店とのブランド管理、知的財産に関するご相談などをサポートしています。

まだ台湾進出を正式に決定していない段階でも、「このブランド名は台湾で使えるのか」「台湾代理店に商標を任せても大丈夫なのか」といった事前相談は可能です。

台湾市場への進出をご検討中の日本企業の方は、事業を開始する前に、一度ブランドと知的財産の状況を確認しておくことをおすすめします。

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