台湾商標登録を検討中の方へ|よくある質問6選と出願のポイント

台湾で商標登録を検討中の方へ。
この記事では、日本企業や個人事業主の方からよくいただくご質問をもとに、台湾の商標制度と海外出願の基本ポイントをまとめました。

この記事でわかること

  • 台湾の商標は「登録しないと保護されない」のか
  • 1つの商標でどこまで商品・サービスをカバーできるのか
  • 審査期間の目安と、時間が延びるケース
  • 自作ロゴでも登録できない場合がある理由
  • 個人出願と法人出願、それぞれのメリット・注意点
  • 複数国に出願したい場合の2つのルート(個別出願/マドリッド制度)

台湾市場への進出や、台湾を含めたアジア展開をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。


台湾商標の制度の基本:なぜ「登録主義」が重要なのか

まず押さえたいのは、台湾は「登録主義」を採用しているという点です。
つまり、順番は台湾で登録してから使用することが一番安全です。

  • 商標は、実際に使っているだけでは原則として十分に保護されません。
  • 商標として正式な保護を受けるためには、商標登録が必要になります。
  • 先に出願・登録した者が優先される、いわゆる「先願主義」が基本です。

そのため、次のようなリスクを回避するためにも、早めの出願が非常に重要です。

  • 自社が先に使っていたにもかかわらず、他社に先に登録されてしまう
  • ロゴやネーミングを真似されても、登録がないため強く主張できない
  • 海外展開やライセンス交渉の場面で、商標権を前提としたビジネスが組めない

ここからは、よくある質問形式で、より具体的に解説していきます。


日本・台湾の商標出願制度 比較一覧

項目日本台湾
制度の基本先願主義・登録主義先願主義・登録主義
所管官庁特許庁(JPO)經濟部智慧財產局(TIPO)
出願言語日本語中国語(繁体字)
出願人の資格個人・法人ともに出願可個人・法人ともに出願可
出願方式電子出願または書面出願電子出願または書面出願
区分制度ニース分類(国際分類)を採用ニース分類(国際分類)を採用
1出願あたりの区分多区分出願が可能多区分出願が可能
審査方式実体審査制実体審査制
審査期間の目安約4-5か月前後
(補正・異議等で延長あり)
約6か月前後
(補正・異議等で延長あり)
存続期間登録日から10年登録日から10年

Q1. 商標は必ず登録しないといけませんか?

A:台湾は「登録主義」を採用しており、商標を正式に保護するには登録が必要です。未登録のままでは、他人に先に取られたり、模倣されたりするリスクがあります。

もう少し踏み込むと、次のような点がポイントになります。

  • ビジネスとしてブランドを育てるなら、実質的には「登録必須」に近い
    パッケージ、ECサイト、広告、展示会など、露出が増えるほど模倣リスクも高まります。
  • 未登録の状態だと、仮に相手を警告したり、販売差止めを求めたい場合でも、
    「自社の正当な権利」として示せるカードが弱くなってしまいます。

一方で、まったく市場に出さない試験的なブランド名や、内部用のプロジェクト名まで、すべて登録する必要はありません。

判断の目安

  • 商品・サービスとして市場に出す予定がある
  • 広告費をかける、販路を広げるつもりがある
  • 将来的にライセンス、フランチャイズ、OEM展開などを検討している

このような場合は、本格的な展開前に商標登録を検討することをおすすめします。


Q2. 1つの商標で複数の商品やサービスをカバーできますか?

A:はい、可能です。ただし、各「類別」ごとに別途申請・費用が発生するため、実際に使用する予定の範囲を慎重に選ぶことをおすすめします。

台湾を含む多くの国では、「ニース分類」と呼ばれる国際分類に基づき、商品・サービスを「類別(日本語:区分)」ごとに区分しています。

類別とは?

  • 「第25類」…衣類、靴、帽子 等
  • 「第30類」…コーヒー、茶、菓子、パン 等
  • 「第35類」…広告、オンラインショップ運営 等

たとえば、アパレルブランドがECサイトで商品を販売する場合、

  • 自社ブランド名を商品タグやラベルに付す → 第25類(衣類)
  • 自社ECサイト名としても同じ商標を使う → 第35類(小売・オンラインショップ)

といった形で、1つの商標を複数の類別で登録することも一般的です。

類別を増やしすぎないほうが良い理由

  • 類別が増えるほど、官庁費用・代理人費用が増加します。
  • 実際に使う予定のない類別まで出願すると、後々、不使用取消のリスクが出てくる場合もあります(代理人費用も増えるでしょう)。

そのため、台湾でのビジネス計画を踏まえ、

  • いま実際に使っている商品・サービス
  • 1〜3年以内に本格展開する予定のもの

を中心に、専門家のアドバイスによって戦略的に類別を選定することが大切です。


Q3. 商標の審査にはどれくらいかかりますか?

A:台湾の場合、平均で約6か月程度ですが、補正や異議申し立てがあると延長される場合があります。

実務上、次のような流れで進めましょう。

  1. 出願(申請)
  2. 方式審査・実体審査
    • 記載内容や指定商品・サービスがルールに沿っているか
    • 既存の登録商標と紛らわしくないか
    • 識別力に問題がないか 等
  3. 公告
    • 一定期間、第三者からの異議申立の機会が設けられます。
  4. 登録料の支払い・登録証の発行

補正や審査官からの拒絶理由通知がなく、スムーズに進めば、概ね6か月前後で登録に至るケースが多いです。

一方で、

  • 商標が他人の登録商標と似ている
  • 指定した商品・サービスの表現に修正が必要
  • 第三者から異議申し立てが入る

といった場合には、回答や交渉のために期間が延びる可能性があります。
台湾進出のスケジュールに合わせて、余裕をもったタイムラインで出願することをおすすめします。


Q4. ロゴを自分でデザインしました。それでも登録できない可能性はありますか?

A:はい、あります。他人の登録済み商標と似ている場合や、識別性が弱い場合などは登録が拒否されることもあります。事前の商標調査が非常に重要です。

「自分で作ったロゴなので大丈夫」とお考えになる方も多いのですが、
実際には、次のような理由で拒絶されるケースがあります。

1. 他人の登録商標と類似と判断される場合

  • 文字部分が似ている
  • ロゴの構成や全体印象が似ている
  • 同じ類別、または関連性の高い商品・サービスで使用されている

たとえ完全にコピーしたものでなくても、全体として見たときに紛らわしいと判断されれば、拒絶されることがあります。

2. 識別力が弱いデザインの場合

  • 「お茶」「石鹸」「CAFE」など、商品やサービスそのものを直接示す語だけで構成されたもの
  • ごく単純な図形や、ありふれた装飾のみで構成されたもの

このような場合、「誰のものかを識別できない」とされ、
商標としての識別力が不足していると判断されることがあります。

なぜ事前調査が重要なのか

  • 出願後に拒絶されてしまうと、
    • 出願にかけた時間と費用が無駄になってしまう
    • ロゴやブランド名の作り直しが必要になる場合もある
  • 事前に調査を行えば、
    • 類似商標の有無を確認し、リスクを把握した上で出願できる
    • 必要に応じて、ネーミングの微修正やロゴ案の調整ができる

台湾だけでなく、将来展開したい他国も含めて調査することで、ブランドの一貫性を保った長期的な戦略が立てやすくなります。


Q5. 個人でも商標を申請できますか?

A:はい、個人・法人どちらでも申請可能です。商業利用を前提とする場合は、将来の管理のしやすさを考えて法人名義での出願をおすすめしています。

個人名義での出願

メリット

  • 個人事業主の段階でも、ブランドを保護できる
  • 会社設立前から、商標権を確保しておきたい場合に有効

注意点

  • 後から法人に事業を移管する際、商標権の名義変更(譲渡手続き)が必要になることがあります。
  • 出資者やパートナーが増えた場合に、「誰の権利か」が問題になるリスクがあります。

法人名義での出願

メリット

  • 会社が保有する無形資産(知的財産)として整理しやすい
  • ライセンス契約やフランチャイズ展開の際に、契約主体が明確
  • M&Aや事業譲渡の際にも、資産として評価されやすい

そのため、商業利用を前提として台湾市場に本格参入する場合は、法人名義での出願をおすすめすることが多いです。
どのタイミングでどちらの名義にするかは、ビジネス全体の設計とあわせて検討すると良いでしょう。


Q6. 商標を複数の国で同時に出願したい場合はどうすればよい?

海外展開を視野に入れているブランドにとって、
「台湾だけでなく、複数国で同じ商標を守りたい」というニーズは非常に多くなっています。

その際の代表的な方法が、次の2つです。

  1. 各国に個別出願する方法
  2. マドリッド商標制度(Madrid System)を利用する方法

順番に見ていきましょう。


方法1:各国に個別出願する方法

現地の代理人(商標事務所・弁理士など)を通じて、
各国の商標法・言語・書類要件に従い、それぞれ出願を行う方法です。

メリット

  • 各国ごとに、
    • 指定商品・サービスの内容を柔軟に調整できる
    • その国特有のルールや実務を前提に、最適な形で出願できる
  • マドリッド制度がカバーしていない国(例:UAE、香港、台湾、マレーシアなど)にも対応可能。
  • 将来、国ごとにブランド展開が変わっても、個別に戦略を組みやすい

デメリット

  • 各国ごとに
    • 官庁費用
    • 現地代理人の費用
      が発生するため、コストが高くなりがちです。
  • 国ごとに
    • 出願日
    • 審査期間
    • 登録・更新期限
      が異なるため、スケジュール管理・手続き管理が煩雑になりやすいです。

複数国に本格展開する中長期戦略を立てる場合は、
「どの国を優先するか」「どのタイミングで増やすか」を整理した上で、出願順序を設計することが重要です。


方法2:マドリッド商標制度(Madrid System)

WIPO(世界知的所有権機関)を通じて、
一つの国際出願で複数の加盟国に商標を出願できる制度です。

メリット

  • 1つの国際出願で、複数の加盟国を一括指定できるため、
    • 出願手続きの手間を軽減
    • 管理コストの削減が期待できます。
  • 後から国を追加指定することも可能であり、
    • 事業拡大のフェーズに応じて加盟国を増やしていくことができます(追加指定には別途基本料金が必要)。
  • 更新や名義変更などの管理も、一括で行えるケースが多く、
    • 長期的なブランド管理の観点でも効率的です。

デメリット

  • 最初の5年間は「基礎出願(または基礎登録)」に依存します。
    • 基礎出願が拒絶・取消し・放棄されると、
      • それに連動して国際登録も取り消される可能性があります。
  • すべての国がマドリッド制度に加盟しているわけではありません。
    • たとえば、香港・台湾・アルゼンチンなどは、現時点ではこの制度を利用できません。

台湾とマドリッド制度の関係

  • 台湾はマドリッド制度の非加盟国です。
  • そのため、台湾での商標保護をマドリッドのみでカバーすることはできません。
  • 一般的には、
    • 加盟国(例:中国など)で基礎出願を行い
    • かつ当該国に現地法人を有することが必要になる場合があります。

台湾を含む東アジア・東南アジアに展開する場合は、

  • 「どの国をマドリッドでまとめるか」
  • 「どの国は個別出願とするか(台湾・香港など)」

を整理し、コストとリスクのバランスを取りながら全体設計をすることがポイントです。


台湾で商標戦略を立てるときのチェックリスト

最後に、台湾で商標出願を検討する際のチェックポイントを整理します。

  • 台湾で使用するブランド名・ロゴは確定しているか
  • そのブランドを使用する商品・サービスは何か(将来展開も含めて)
  • 必要な類別(クラス)を洗い出しているか
  • 台湾以外に、近い将来展開予定の国・地域はどこか
  • その国々でマドリッド制度を利用できるか
  • 申請名義は個人か法人か、将来の事業計画と整合しているか
  • 商標調査(同一・類似の確認)は事前に行っているか
  • 出願〜登録までのスケジュールを、事業計画に組み込んでいるか

これらを整理しておくことで、
ムダな出願や抜け漏れを防ぎ、効率的に商標ポートフォリオを構築することができます。


まとめ:台湾での商標登録は「早めの一歩」と「全体設計」がカギ

  • 台湾は登録主義・先願主義の国であり、ブランドを守るには出願・登録が不可欠です。
  • 1つの商標で複数の類別をカバーすることもできますが、
    • 実際に使う範囲を意識して、戦略的に選ぶことが大切です。
  • 審査には平均6か月前後かかり、補正や異議があればさらに時間が延びます。
  • 自作ロゴであっても、
    • 類似商標が存在する場合や識別力が弱い場合は、登録できないことがあります。
    • そのため、事前調査はリスク回避のための重要なステップです。
  • 個人・法人どちらでも出願可能ですが、
    • 本格的な商業利用や多国展開を見据える場合は、法人名義が有利な場面も多くあります。
  • 複数国出願を検討する場合、
    • 「各国個別出願」と「マドリッド制度」という2つのルートの特徴を理解し、
    • 台湾・香港など非加盟国も含めた全体設計が重要になります。

台湾での商標登録や、台湾を含めた複数国への商標出願は、
各国の制度とビジネス戦略を踏まえて進めることが成功への近道です。

  • 「自社の場合はどの方法がベストなのか知りたい」
  • 「台湾と他のアジア諸国を一緒に検討したい」
  • 「いまのブランド名で本当に出願して大丈夫か不安」

といったお悩みがあれば、
具体的なビジネスプランを伺ったうえで、最適な出願ルートや類別選定のご提案も可能です。

台湾での商標登録や海外商標戦略についてご相談がありましたら、
ぜひ一度専門家にお問い合わせください。

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