台湾の商品の特許はどうやって取る?―ポイントをまとめて解説

多くの方にとって「特許」は、どこか自分とは縁遠い存在で、ハイテク製品や機械設備、ソフトウェアの世界だけのもの、というイメージがあるかもしれません。
しかし、特許はこうした業界だけのものではありません。

立体的な「モノ」として存在する商品であっても、特許の対象としてとても相性が良いケースが多くあります。
商品の中に独自の外観デザイン、構造上の工夫、機能面での新しいアイデアが含まれていれば、それらは特許による保護の対象になり得ます。

近年はアクセサリーブランドの台頭もあり、
「自分の作品はこんなに特別だけれど、特許って取れるの?」
と考えるデザイナーさんも増えてきました。

答えは「はい、取れます。そして、その価値はとても大きい」です。

今回、台北・芝山にあるオリジナルデザインのジュエリーブランド「嬉金坊」様の作品について、特許戦略のご支援を行い、ショート動画(中国語)でも簡単にご紹介しました。


そのインタビューの中で、特許の要件や種類といった基本的な部分が、一般的にはまだあまり知られていないと感じました。
そこで本記事では、「特許」の性質をわかりやすく整理し、短時間で理解していただくことを目指しています。

例として、台湾ですでに特許を取得している2つの作品――
「雙重心動」と「絮語シリーズ」――を取り上げます(下図参照)。

(画像出典:「嬉金坊」

前者は、独特なラインの美しさを活かして新型専利(Utility Model)を取得。
後者は、構造上の革新的なメカニズムによって、発明専利(Invention)を取得しました。
この2つの事例は、「クリエイティブなデザインは、アートであるだけでなく、排他的な権利を持つ“特許”にもなりうる」ということを端的に示しています。


1.なぜアクセサリーにも特許による保護が必要なのか?

アクセサリーブランドのデザイナーにとって、インスピレーションはすべての出発点です。
しかし、SNSやECサイトで情報が瞬時に拡散される今の時代、作品が模倣・コピーされるリスクも同時に高まっています。
デザイナーが時間と情熱をかけて生み出した造形が、数週間もしないうちに、他のサイトで低価格商品として販売されてしまう――そんな事例は決して珍しくありません。

こうしたときにこそ、「特許」の存在が非常に重要になります。
特許は単なる「アイデアの証明」ではなく、デザイナーの努力と創造性を守るための法的な手段です。
特許を取得することで、デザイナー・ブランドは次のようなメリットを手にできます。

排他的な権利を主張し、無断での使用・販売・製造を防止できる
・ブランド価値を高め、「ただのオシャレ」から「オシャレ+保護+技術」を備えた商品へステップアップできる
・技術力や専門性の象徴として、ビジネスパートナーや投資家の信頼を得やすくなる

嬉金坊の創業者・Angelaさんは動画の中で、「雙重心動は、ただ特別な美しさを持つだけでなく、特許によって守られているんです。」とお話しされていました。
この一言こそ、すべてのクリエイターが持つべき「ブランド意識」だと言えるでしょう。


2.台湾における3種類の特許の基本概念

特許を取得できるのは、アクセサリーだけではありません。
さまざまな種類の商品が、特許の対象となり得ます。

現在、台湾の特許制度は大きく次の3種類に分かれています。

1️⃣ 発明特許(Invention)
2️⃣ 新型特許(Utility Model)
3️⃣ 設計特許(Design)

同じ「専利(特許)」という名称でも、保護の対象・ポイントや審査のハードルはまったく異なります。

1️⃣ 発明特許(Invention Patent)
技術的な原理や、機能メカニズムのブレイクスルーを保護する制度です。
・ハイテク分野
・プログラム・アルゴリズム
・新素材
・特殊な構造 
などに適しています。
嬉金坊の「絮語シリーズ」の場合、特別な可動構造によって、アクセサリーがさまざまな角度に折りたたまれたり回転したりできるようになっています。
これにより、見た目の美しさだけでなく、高い技術性も兼ね備えています。


2️⃣ 新型特許(Utility Model)
構造・組み合わせにおける「新しい工夫」を保護する制度です。
・機構設計
・機能性商品
・着脱可能なパーツや付属品
などに向いています。


3️⃣ 設計特許(Design Patent)
商品の外観を保護する制度で、形状・模様・意匠といった「見た目のデザイン」を対象とします。
・アクセサリー
・アパレル
・インテリア・雑貨
・パッケージデザイン
など、ビジュアルの印象が重要な商品に適しています。
「雙重心動」シリーズは、最終的にはさまざまな要素を総合的に検討した結果、新型専利を取得しましたが、
その流れるような交差ラインとハートのシルエットは、まさに設計専利の典型例と言えます。
他では簡単に真似できない造形言語を持つデザインだからこそ、特許による保護に値するのです。


3.台湾における3種類の特許の比較

ここでは、3つの専利類型の違いと特徴を整理し、デザイナーやブランドオーナーがポイントを掴みやすいようにまとめました。

専利の種類保護のポイント適した対象審査期間(目安)保護期間
設計専利外観デザイン、ラインの美しさ立体商品、パッケージデザイン約12か月15年
新型専利構造・組み合わせの設計機能性を持つ物品約4〜6か月10年
発明専利技術原理、革新的な機構技術レベルの高い商品、無形技術約1〜3年20年

👉 主な違いのイメージ:

商品の「見た目」を重視し、機能は特別ない
 → 設計専利(Design)を検討

商品に「構造面での工夫」があり、一定の機能性を持つ
 → 新型専利・発明専利のいずれかを検討

「原理」や「材料」そのものに革新性がある
 → 発明専利、または場合によっては新型専利も検討対象


4.特許を申請するために必要な3つの条件

どの類型の専利であっても、出願時に満たすべき基本条件は共通しています。
ポイントは次の3つです。

1️⃣ 新規性(新穎性)
最初に検討する際、多くの出願人が驚かれる点がここです。
「新規性」とは、そのデザインや技術が、出願前に公開されていないことを意味します。
そうです。作品がすでに展示会やSNS、自社サイトなどで公開されている場合、新規性を喪失しており、要件を満たさない可能性があります。

👉 知築からのアドバイス:
公開してしまったからといって、必ずしも完全に「アウト」とは限りません。
まずは専門家に相談し、まだ申請のチャンスが残っていないかを評価してもらうことをおすすめします。

2️⃣ 進歩性(進步性)
特許には、単なる既存商品のアレンジではない「進歩性」が求められます。
では「単なるアレンジ」とは何でしょうか?
例:イヤリングの金具の色をゴールドに変えただけ → 進歩性とは見なされない

例:イヤリングが角度に応じて重心を自動調整し、装着時の安定性を大きく改善する構造 → 技術的進歩があると評価される可能性が高い

このように、機能面・構造面での明確な工夫があるかどうかがポイントです。

3️⃣ 産業上の利用可能性(產業利用性)
商品が実際に製造・利用でき、産業の中で活用可能であることも条件の一つです。
つまり、単なる抽象的な「アートコンセプト」だけではなく、
きちんと「実施可能な形」になっている必要があります。


5.商品ブランドが陥りがちな“思い込み”

ブランドオーナー様とお話ししていると、
創業初期に次のような「誤解」をお持ちのケースがよくあります。

❌ 誤解①:技術系の商品だけが特許を取れる
実際には、「新しい要素」を持つあらゆる商品に、特許の可能性があります。
立体物としてのアクセサリー・雑貨などでも、実際に特許取得に成功している事例は多く存在します。

❌ 誤解②:商標だけ登録しておけば十分
商標が保護するのは「ブランド名」や「ロゴ」であって、商品の外観や機能そのものではありません。
商標しか取っていない場合、商品デザインの部分では模倣リスクが残ったままになってしまうことに注意が必要です。
商品については、商標登録(ネーミング・ロゴ)
特許・専利による保護(デザイン・構造・機能)
を併用して、立体的に守ることが理想です。

❌ 誤解③:販売してみてから、うまくいったら特許を考える
商品をすでに市場で公開・販売している場合、
新規性が失われ、出願できなくなるリスクがあります。
本来の正しい流れは、「先に出願 → その後に公開」
という順番です。

❌ 誤解④:実物ができてからでないと特許は考えられない
これは「いいえ」です。
一部の特許は、アイデア段階・設計段階から出願することも可能です。
もちろん、実物があるほうが実施形態をより具体的に示しやすく、
権利範囲のブレも小さくなりやすいというメリットはあります。


6.ケーススタディ:

「雙重心動」と「絮語シリーズ」から学ぶ特許戦略嬉金坊が、競争の激しいアクセサリー市場の中で存在感を放っている理由は、デザインの美しさだけではありません。
それ以上に、知的財産を戦略的に活用している点が大きな強みです。
独自の美的センスと世界観

それを支える構造・技術に対する特許戦略

この2つを組み合わせることで、嬉金坊は「アートとしての価値」と「技術的な参入障壁」の両方を手に入れ、
強固なブランドの“護城河(モート)”を築いています。
デザイナーにとって、特許は単なる防御手段ではなく、「マーケティングの武器」の一つにもなります。
消費者が「この作品には特許がある」と知ったとき、ブランドへの信頼感や説得力は自然と高まります。


7.まとめ:デザインを“見せる”だけでなく、“守る”という発想を

クリエイティブは、ブランドの“魂”そのものです。
そして特許は、その魂を守るための盾と言えます。
本記事の事例からもわかるように、外観デザインであれ、構造上の工夫であれ、特許制度をうまく活用することで、あなたの作品は市場でより長く、強く輝き続けることができます。
もし、あなたが今まさに新しい商品・新シリーズを企画しているのであれば、一度、こんな問いかけをしてみてください。
「このデザインには、特許で守るべきポイントがあるだろうか?」


💬 プロによるアドバイス

知築智慧產權(Chichiku IP)は、ブランドオーナーの皆さまを対象に、
特許の適否の検討、出願手続きから海外展開・権利活用まで、
トータルでサポートするコンサルティングを提供しています。
🔹「自分の商品は特許出願に向いているのか知りたい」
🔹「台湾だけでなく、海外も視野に入れた特許戦略を立てたい」
そのようなご相談があれば、ぜひ一度お声がけください。
あなたのクリエイティブを、最も力強い形で守るお手伝いをいたします。

👉 今すぐ相談予約する

📌 公式LINE登録 / フォーム入力で,無料相談受付中です!


更多參考文章:
商標登録はゴールではない──知的財産権を活用するための実践ガイド
海外商標出願を節約するには?5分でわかるコスト削減の実践ガイド
【クリエイター必見】商標登録の基礎知識!(コラボ動画)
【オーナー必見】私が手がけた最も達成感のある商標・特許案件──実務から学んだ3つのこと

最新消息