仕事をしていると、誰しも「一生忘れられない案件」に出会うことがあります。
私にとって印象に残っている案件は、金額の大きさや期間の長さとは限りません。
むしろ、ごく普通に見える案件でも、タイミングと対応が絶妙だったことで、大きな価値と達成感を感じたものがあります。今回は、私が実際に手がけた中で特に意義深いと感じた3件の案件を共有します。
単に知的財産の管理ができたからではなく、**「知財コンサルタントがいることで、ブランドが本当に守られる」**という実感を得た案件です。
ケース①:登録できなかったと誤解し、同じ名前のロゴを再デザインしてしまった話
台湾で鯛焼き風の焼き菓子を販売する屋台経営者が、自力で商標(以下A商標)を出願。ところが「拒絶理由通知」を受け取り、すでに登録されている同名のB商標があると指摘されました。
しかし、そのB商標は通知から1ヶ月後に更新されなかったため消滅。
つまりA商標は実は「登録できる状態」だったのです!
その後、台湾知的財産局(TIPO)から「登録費の支払い通知」が届いたのですが、依頼者はこれを“再出願の案内”と誤解して放棄してしまいました。
そして、同じ名称の新しいロゴを作り直し、別ルートで私のところにご相談がありました。
私はまず商標検索を行い、A商標のあとに、同じ名前のC商標が申請待ちであることを発見。
もしA商標の登録費を払わず失効していたら、今後はC商標にブロックされて出願できなくなるところでした。
結果:
- A商標の回復申請を行い、登録費用2倍を支払い無事に回復
- 新しいロゴで新たな商標出願を実施
このような「ちょっとした誤解」が、大きな損失や権利の喪失につながる例です。
ケース②:拒絶された商標を粘り強く争い、登録に成功
ジュエリーブランドの商標申請。見た目はシンプルで通りそうな案件でしたが、英字の一部が既存の登録商標と類似しているとして拒絶理由通知が届きました。
相手の商標は「漢字+英語+ロゴ」の結合商標で、漢字の文字サイズが大きいものでした。一方で、依頼者の商標は英語のみで構成されていました。
依頼者から電話があり、「似ている部分が理解できない。どうしてもこの名前を使いたい」と熱く語られ、一緒に方向性を議論することに。
1時間以上の通話と、TIPOへの直接問い合わせの末、補充意見書を再提出。
文字配置、使用文脈、市場ターゲット、デザインの違いを強調し、最終的に2回の補正で審査官を説得し、登録に成功しました。
ケース③:中国ECで見つけた特許侵害
台湾メーカーが、中国のECサイトで元協力企業がほぼ同じ外観の商品を販売していることを発見。
調査の結果、当社が中国で取得済みの実用新案・意匠特許を侵害していることが明らかになりました。
当社は技術的な比較・中国の特許法に基づき、現地弁護士と連携してプラットフォームへ警告書を送付。
結果、相手企業は提携交渉に応じ、損害賠償の合意を目指す形となり、長期的な市場の混乱を防ぐことができました。
実務を通じて得た3つの学び
1. 早めの準備は、あらゆるテクニックよりも重要
「優秀な弁護士さえいれば大丈夫」と思う方も多いですが、商標も特許も、早く準備することが最大のリスク回避です。
タイミングを逃すと、他者にすべて奪われることもあります。
2. 完璧を求めるより、「制度を知る」方が大事
知的財産制度には柔軟性があります。
商標補正、特許の応答、取消制度など、制度の仕組みを知っている人が有利なのです。
ただ「登録証をもらう」より、「どう使うか」の方が重要。
3. 知財保護=ブランド価値を形作る行為
知財への対応は、そのままブランドのメッセージになります。
声を上げるかどうか、交渉するかどうかは、ブランド価値観の現れ。
知財は法務の仕事ではなく、経営戦略の一部として捉えるべきです。
実務を通じて得た3つの学び
1. 出願前に商標検索を!
名前がユニークでも、他人と被る可能性は十分あります。検索するだけで訴訟リスクを大幅に減らせます。
2. 使用の証拠を必ず残す
ロゴデザイン、名刺、パッケージ、契約書、広告など、将来の紛争に備えてすべて証拠になります。
3. 契約内容は必ず文書化
デザイナー、工場、代理店などと商標の帰属を明確にしないとトラブルの原因になります。
4. 侵害を見つけても、感情的に動かないこと!
ネットで怒りをぶつけたり、直接警告書を送ったりすると、逆に不利になる可能性も。
まずは専門家に相談してから対応を進めましょう。
結び:知的財産を「ブランドの堀」に変えよう
ブランド構築は、アイデアやマーケティングだけでは不十分です。
目に見えない資産(知財)こそ、ブランドの将来を左右するカギになるのです。
今日の実例が、知財の真の価値を考えるきっかけになれば幸いです。
知財の価値は、訴訟に勝つことではなく、活用してブランドを成長させること。
👉 あなたのブランド商標は、本当に守られていますか?
ブランド名・ロゴが安全か不安な方は、
ぜひ【無料商標検索相談】をご利用ください。
一緒に、あなたのブランドに最強の守りを構築しましょう!
📌 公式LINE登録 / フォーム入力で,無料相談受付中です!

